2013年10月11日金曜日

「リヴィエラを撃て」久方ぶりの再読


★★★★★
何十年か振りかの再読である。やっぱり面白い、こういうジャンルの本は大好きだ。
これだけ時間が経つと、殆ど忘れており、新作を読むようで新鮮であった。分厚い!!、しかも物語が重く、何か切なくなってしまい、読み続けるのがちょっと辛くなる。
読み終わった後は、どっと疲れ、しばし暗鬱な気分になる。
レディ・ジョーカーを読んだ後も、同じ感想を抱いた。読む人に取っては、高村薫独特の世界にどっぷり浸かるには少々疲れるかもしれない。
謎のコードネーム「リヴィエラ」に、IRA,MI5,MI6、外事警察のスパイ等が動き、渦中に巻き込まれた男女の人生が大きく翻弄される。元IRAのジャック・モーガンとその恋人、MI5のキム・パーキン、元MI6のピアニストのシンクレア、さらには外事警察の手島等、複数の人達が、謎の「リヴィエラ」を探し求める。特定な主人公は居ないが、皆魅力的なキャラクタであり思わず感情移入してしまう
物語の舞台は、アイルランド、ロンドン、そして東京。特にアイルランドの寂寥とした描写は秀逸だ。第2の故郷のようと話している著者ならではの鋭い描写力に感服。アイルランドには旅行した事があるが、主に南で舞台となった北アイルランドには行ってない。旅紀行では、自然描写を表すのが難しいが、著者が描き出している自然風景を出せたらなとつい思ってしまう。
高村薫はTVのコメンテーターとして出演したのを見た事があるが、男のような低い声で話し、考え方がシビア、自分に厳しい人だなと感じた。作風そのままだ。
あんな細い体に、どれだけのエネルギーがあるのかと首傾げてしまうが、骨太の物語を紡ぎ出す力は本物だ。こんな重い世界の本を読んだ後は、軽い本を読むしかない。
(で、今はジェフリー・ディーバーの「007白紙委任状」を読んでいるが、リンカーン・ライムシリーズと違い、謎解き要素が少なく全然面白くない。)。
次回は、「神の火」、「マークスの山」も再続しようかな....。
P.S
高村薫は、本の文庫化の際、大幅に手を加えるそうだ。本作品の文庫化でも、最後の部分がかなり変わっているとの事だ。どう変わったのか、見たいようなみたくないような複雑な気分である。

2 件のコメント:

  1. 高村氏の作品は長編過ぎ読むのにかなりエネルギーがいるね。
    それを読むとは貴君も凄い。
    短編があれば読んでみたい作家なのですが…。
    TVで見たけどシビアな方のような面白い方のような。

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  2. 途中で投げ出したいくらいの長さ、かつ物語が重い。重厚と云えば聞こえが良いが、寂寥感が漂って来て暗鬱な気分になってしまう。でも、読了後は又違う作品を読みたくなってしまう。そんな作風の作家かな。ところで、小説現代に連載されたが、単行本化されてない「捜査第七係シリーズ」があるらしいです。そろそろ出版されるかなと期待しているんですが...

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